患者さんへ

私の骨髄液を受け取った患者さんへ。

 

私は貴方のドナーになれたことで、骨髄採取というとても貴重な経験をさせて頂きました。

 

骨髄バンクからショートメールが来たときの事は、今でも鮮明に覚えています。

 

何の取り柄もない私が、誰かの役に立てるかもしれない!ただそれだけの気持ちでした。

 

妻にドナーに適合した事を伝えると、最初は戸惑いながらも、「あなたが決めたことだから」と、快く承諾してくれました。

 

採取後に聞きましたが、妻は内心は心配していたそうです。

 

 

最終同意面談が済んでからは、毎日患者さんの事を思いながら過ごしていました。

 

どこに住んでいるどんな人なんだろう?

 

結婚しているのかな?

 

子供はいるのかな?

 

仕事は何をしているのかな?

 

家族や友人、職場の人が心配しているだろうな。

 

体調が急変したりしていないかな?

 

患者さんの事を思わなかった日は1日もありません。

 

手術は怖くなかったかと聞かれたら、少しだけ不安がでしたが、先生や看護師さんの手厚いサポートで、あっという間に終わってしまったので、手術に到達するまでの日々の暮らしの方が、よっぽど大変でした。

 

 

骨髄採取が終わって数ヶ月が経ちましたが、今でも色んな患者さんのブログやSNSを拝見しています。

 

移植後もずっと病気と戦わなければならない患者さんに、今の私は何もすることができません。ただ、患者さんの回復を祈るのみ。

 

移植がうまくいっていれば、そろそろ退院している頃でしょうか?

 

お会いして、元気になられている姿を見たいのですが、それが叶わないのが非常に残念です。

 

患者さんは、私に対して感謝の気持ちしかないかもしれませんが、私も患者さんに対して感謝の気持ちでいっぱいです。

 

骨髄移植で色々な事を考え、学ぶ機会を頂きました。

 

これからの人生の糧となる素晴らしいものです。

 

患者さんの体調が良くなることを心から願っています。

 

どうぞご自愛ください。

採取後アンケート

採取後、郵便ポストを毎日必ずチェックしています。

 

「患者さんからの手紙………、今日もないかぁ。」

 

コーディネーターさんからは、手紙が来る確率は50%とのこと。

 

御礼の言葉が欲しい訳ではなく、ただ患者さんが無事でいてくれたら。ドナーがそれを確認出来るのは、手紙だけなので。

 

 

採取から3ヶ月。骨髄バンクから一通の封筒が届きました。

 

「もしや……?!」

 

 

採取後、3ヶ月アンケートのお願いでした。

 

ドナーになろうと思った動機や、提供に対して不安があったか、今後も提供したいかなどが記されてました。

 

その中に1つ気になる問いが。

 

「現在は、提供を受けた患者さんの移植後の状況についてはお知らせしておりませんが、移植後の経過について、たとえ経過が悪くても………」

 

という問いがありました。

 

もちろん私は、「詳しく知りたい」を選びました。

 

骨髄バンクにも患者さんの具合を知りたい、という声が一定数来ているんでしょう。

 

ドナーとしては、時間とリスクをかけて提供しているので、経過を教えてもらってもバチは当たらないと思います。

 

私は手紙が貰えなければ、手紙のやり取りの期限である採取から1年後に、患者さんの具合だけでも知りたいです。

 

 

今回のアンケートをもって、とりあえず今回の骨髄バンクによる骨髄提供は終わりです。

採取からまだ1年経ってないので、もしかしたら、もしかしたら手紙が届くかもしれませんが…。

 

また後日、今回の骨髄採取の考察を書こうと思います。

術後検診

退院から2週間経ちました。

背中の鈍痛は、一週間ほどで消え、体の調子はすこぶる良くなりました。

 

この日は術後検診。

お世話になった〇〇大学病院へ。

 

 

「………、どこで診察券を渡したらいいのか………」

 

今まで貯血以外は、コーディネーターさんが、受付から何から何までやって頂いていたので、

 

こちらの大学病院の受付がどこかなどがわかりません(-_-;)

 

ウロウロしていると、コンシェルジュの方と目が合ったので、

 

「すみません…、今日血液検査と10時から血液内科で予約とってるんですけど、どうしたらいいですか?」

 

「診察券はお持ちですか?………、でしたら、こちらの機械に診察券を通して頂き………」

 

「………ありがとうございます。」

 

地元のかかりつけ医のように簡単にはいきません。

 

一度行くとわかるんですが、初めての人はどこに行ったらいいのかわからないと思います。

そんな人の為に大きな病院にはコンシェルジュがいるんですね。

 

採血室で採血して、血液内科の診察室の前で待つこと数十分。

 

「〇〇さーん、お入りください」

 

 

診察室に入ると、お世話になった先生がおられました。

 

「どうも〇〇さん、血液検査の結果ですが、炎症も見られませんし良好ですね。腰の調子はいかがですか?」

 

「特に痛みもありませんし大丈夫です。」

 

「一応患部見せてもらいますね………、特に腫れもありませんし大丈夫ですね!これで診察はすべて終わりになります。〇〇さん、お疲れ様でした。」

 

「先生、ありがとうございました。ホントに良い経験させて頂きました。またドナーに選ばれたらよろしくおねがいしますね」

 

「そのときはまた丁寧に採取させてもらいますよ」

 

先生に一礼して診察室を出ました。

 

 

〇〇大学病院に来るのもこれで終わり。

 

 

「今日は美味しいもん食べて帰るかぁ〜」

 

行きつけの天丼を食べて帰りました。

 

燃え尽き症候群

電車で自宅へ。

 

妻と子供が出迎えてくれました。

 

「お疲れ様〜。腰の調子はどう?」

 

「思ったより大丈夫だわ。ちょっと鈍痛が残ってるだけやね。鉄剤もらってんけど、一週間飲まんとあかんみたい。それより何かモヤモヤしててな」

 

「どうしたん?」

 

「わからんけど、やる事なくなってしまって、明日からどうしよう?って感じやな。」

 

「あぁ~、燃え尽き症候群ちゃう?」

 

「そうなんかな?」

 

「だって手術まで色々気遣う事多かったやろし、骨髄採取っていう大きな目標を達成したからやちゃう?明日開催の自転車の大会もキャンセルしたやろ?今まで自転車やマラソンの大会に向かって、練習したり体作ってたやん。またそういった目標持ったらいいんちゃうかな?」

 

「確かに今は目標がないなぁ。わかった!大会探してエントリーするわ!」

 

そう言って、ロードバイクの大会1つ、ハーフマラソンの大会1つに申し込みました。

 

旦那を気遣って、好きな大会に申し込みさせてくれる嫁さんに感謝です。

 

大会に申し込んだは良いものの、術後検診までは激しい運動をしてはいけないので、2週間はウォーキングで我慢我慢。

 

こうして3泊4日の人生初の入院は終わりました。

お別れ

病棟から出て、病院のロビーへ。

 

少し早かったですが、すでにコーディネーターさんが待っていてくれました。

 

「〇〇さんお疲れ様でした。お体どうですか?」

 

「手術後は麻酔酔いがひどかったてすが、それ以外は大丈夫です。腰は少し鈍痛があるくらいですね」

 

「ほんとにお疲れ様でした」

 

「手術するまでは長かったですが、終わってしまえばあっという間ですね。」

 

「手続きしてきますんで、少しお待ち下さいね」

 

そう言うと、会計に行かれました。

 

 

外の空気を吸うのは3日ぶり。

嬉しいような寂しいような………。

 

「お待たせしました。これで終わりになります。3ヶ月後に今回の骨髄採取についてのアンケートが届きますので、また良ければ返信お願いします。あと、献血は半年後から再開できますので。お子さんに、お父さんは凄い人助けしたんだよって言ってくださいね!玄関までお送りしますね」

 

「色々お世話になりました!また機会があれば、ぜい採取お願いしたいです。」

 

病院の玄関で別れると、私が見えなくなるまでずっと見送って下さいました。

 

これでコーディネーターさんともお別れ。

再検査など事件もありましたが、色んな調整をしてくださってホントに、頼りになりました。

コーディネーターさん無しにドナーの骨髄採取はできないです。ほんとにありがとうございました。

 

駅までゆっくり歩きましたが、周りの人の歩く速さが、いつもより早く感じました。

退院

入院4日目。

すなわち退院の日。

 

この日もいつも通り6時に目が覚めました。

(あぁ、今日で退院かぁ。何だかあっという間だったなぁ)

 

朝の情報番組を見ていると、

 

コンコン「〇〇さん、おはようございます。検温お願いします」

 

「………、大丈夫ですね。もうすぐ朝ごはん持ってきますね」

 

病院で食べるご飯もこれで最後。

とても名残惜しい………。

 

最後のメニューは、食パン、リンゴジャム牛乳、オムレツ、バナナ。

 

少しずつ噛み締めながら食べました。

 

朝食を食べて下膳して、部屋でくつろいでいると、

 

コンコン、「〇〇さん、もう退院して頂いても大丈夫ですよ」

 

「え、もういいんですか?」

 

「はい、出来れば10時までにお願いします」

 

「何か手続きとかは?」

 

「特にありませんので」

 

「もう、荷物はスーツケースに入れたので、いつでも出れます」

 

「では、お部屋のチェックしますね。………、テレビカードどうされます?」

 

「もう入院することは無いので持っててもしょうがないですよね?」

 

「私達が処分することはできないので、〇〇さんが処分してください」

 

「………、じゃあ記念に持って帰ります!」

 

 

コロコロとスーツケースを引いて、ナースステーションを横切ると、お世話になった看護師さん達が、忙しそうに働いています。

本来、お世話になりました。ありがとうございました、と言わないといけないのですが、

どうも私から声をかけにくいオーラを皆さん出されています。

すると、「〇〇さん」

 

担当医師の〇〇先生が声をかけて下さいました。

 

「先生、お世話になりました。退院になりました。」

 

「お疲れ様でした。体調はいかがですか?」

 

「腰に張りはありますが、大丈夫そうです。貴重な体験ありがとうございました。またドナーに選ばれたときは、先生の所にお願いすると思います」

 

「ハッハッハ、その時はまた丁寧に採取させてもらいますよ」

 

そう言って、病棟のエレベーターの前まで見送って下さいました。

 

「ありがとうございました!」

 

先生に一礼して、エレベーターのボタンを押しました。

最後の夕食

コンコン、「〇〇さーん、夕食です。」

 

「ありがとうございます」

 

病院食もこの夕食を合わせて、あと2食。

 

あっという間です。

 

今夜のメニューは、カレイの西京焼き、里芋のそぼろ煮、焼き厚揚げ。

 

 

話が少し変わりますが、私は嫁さんより早く家に帰ることが多いので、夕飯を作るのは私の役割になっています。ありがたいことに、子供達は私の作る夕飯が美味しいと言ってくれています。

 

病院で出たメニューは、キノコ(きゅうり)のドレッシング和え以外はほとんど作れますが、やはり作ってもらうご飯は美味しいですね。

 

自分で作ると、どうも味の予想がついてしまうし、自分好みの味付けにしてしまいます。

 

病院食は美味しくないという人がいますが、私がお世話になった病院は、どれも工夫されていて美味しかったです。

 

「ごちそう様でした」

 

 

下膳してゴロゴロしていると、

 

コンコン「〇〇さん、失礼します。今晩受け持ちさせてもらう〇〇です」

 

「よろしくおねがいします」

 

「最後のお薬入れますね」

 

そう言うと、手際よく点滴に入れて下さいました。

 

話しやすそうな看護師さんだったので、今回の入院で初めての世間話をしました。

 

「夜勤大変ですよね?私の嫁さんも助産師なんだすが、夜勤のときは命を削って働いてるって言ってます」

 

「夜勤はそうですね〜。大変です。命削ってると言われたらそうですね。夜勤明けは家に帰ってずっとボーとしてるか寝てますね」

 

 

病気と戦っている患者さんがいれば、患者さんをサポートしている医療従事者がいます。私は幸運なことに、医療従事者の嫁さんと結婚することができ、毎日色んな患者さんの話を聞きます。

助産師なので、病気というより生命の誕生と死の話が多いですが。。。

話を聞いていると、壮絶な体験をしている患者さんがいると、それをサポートしている嫁さんも、間接的に壮絶な体験をしているわけで………。

医療従事者の方々にはホントに頭が下がります。

私がのほほんと夜寝ている間も働いていて下さるのですから。

 

今回の入院で嫁さんの凄さ、ありがたさが改めてわかりました。

いつもありがとうございますm(_ _)m