退院
入院4日目。
すなわち退院の日。
この日もいつも通り6時に目が覚めました。
(あぁ、今日で退院かぁ。何だかあっという間だったなぁ)
朝の情報番組を見ていると、
コンコン「〇〇さん、おはようございます。検温お願いします」
「………、大丈夫ですね。もうすぐ朝ごはん持ってきますね」
病院で食べるご飯もこれで最後。
とても名残惜しい………。
最後のメニューは、食パン、リンゴジャム牛乳、オムレツ、バナナ。
少しずつ噛み締めながら食べました。
朝食を食べて下膳して、部屋でくつろいでいると、
コンコン、「〇〇さん、もう退院して頂いても大丈夫ですよ」
「え、もういいんですか?」
「はい、出来れば10時までにお願いします」
「何か手続きとかは?」
「特にありませんので」
「もう、荷物はスーツケースに入れたので、いつでも出れます」
「では、お部屋のチェックしますね。………、テレビカードどうされます?」
「もう入院することは無いので持っててもしょうがないですよね?」
「私達が処分することはできないので、〇〇さんが処分してください」
「………、じゃあ記念に持って帰ります!」
コロコロとスーツケースを引いて、ナースステーションを横切ると、お世話になった看護師さん達が、忙しそうに働いています。
本来、お世話になりました。ありがとうございました、と言わないといけないのですが、
どうも私から声をかけにくいオーラを皆さん出されています。
すると、「〇〇さん」
担当医師の〇〇先生が声をかけて下さいました。
「先生、お世話になりました。退院になりました。」
「お疲れ様でした。体調はいかがですか?」
「腰に張りはありますが、大丈夫そうです。貴重な体験ありがとうございました。またドナーに選ばれたときは、先生の所にお願いすると思います」
「ハッハッハ、その時はまた丁寧に採取させてもらいますよ」
そう言って、病棟のエレベーターの前まで見送って下さいました。
「ありがとうございました!」
先生に一礼して、エレベーターのボタンを押しました。